虚血性大腸炎(Ischemic Colitis)
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虚血性大腸炎(Ischemic Colitis)
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虚血性大腸炎とは:
虚血性大腸炎は、中年の女性に起こりやすいご病気です。動脈が固くなる動脈硬化や便秘などの腸管内圧の上昇が原因で起こると言われています。動脈硬化が認められない若い方でも発症することもあります。虚血性大腸炎が起こりやすいのは、S状結腸や下行結腸といったお腹の左側の大腸で、お腹の左下あたりに突然痛みが出ることが多いです。
虚血性大腸炎の症状は、突然の腹痛で起こりその後に便に血が混じります(血便)。虚血性大腸炎は、可逆性または一過性の虚血性病変といって、一時的に大腸の粘膜が傷つきますがしばらくすると大腸粘膜も元の状態に回復します。そのほとんどが良性で症状も一時的なもので終わります。
軽症の場合には、特別な治療は必要ありませんが便秘の予防として酸化マグネシウムなどが処方されることがあります。また痛みが強い場合には、鎮痛剤の内服が必要となります。ロキソニンなどのNSAIDsの場合には、消化管の粘膜障害が起きる可能性があるため服用は避けた方が良いでしょう。消化管に影響の少ないカロナールなどが良く処方されます。とくに問題がなければ、ブスコパンが使用されることもあります。
虚血性大腸炎は、狭窄型(stricture type)、壊死型(gangrenous type)というものの場合には積極的な治療が必要となることがあります。この2つのタイプの場合は、入院が必要となったり外科的に腸管を切除しなければならない可能性があります。
診断は、まず突然の発症で血便があることを確認します。CT検査などの画像診断で、大腸の壁が肥厚といって厚くなっていることを確認し、場合によっては大腸内視鏡検査を行って診断を確定します。さらにCT検査では、穿孔といって腸管に穴が開いてないかを確認したり膿瘍といって感染が無いかなどの確認を行います。これらの場合には外科的な処置が必要となることがあります。
大腸内視鏡検査では、虚血が起こった大腸粘膜に粘膜の浮腫・発赤・びらん・出血などの所見が認められます。縦走潰瘍という浅い線状の潰瘍が認められることもあります。重症例では粘膜が黒色に見られることがあります。このような場合には、腸管が壊死している可能性があるため外科的な処置が必要となることがあります。
ほとんどの場合には予後は良好で、数日内に状態の改善が認められます。再発することもあるため日頃から便秘に注意することが肝要です。
内視鏡画像:
症例1.
症例2.
症例3.
症例1:a, b : S状結腸に線状の浅い潰瘍形成を認め、軽度の虚血性大腸炎と診断された。
症例2:c, d : S状結腸にやや深い線状潰瘍形成を認める。潰瘍周囲粘膜には発赤を認める。中等度の虚血性大腸炎と診断された。
症例3:e, f : S状結腸に高度の狭窄を伴う虚血性変化を認めた。深部へのスコープの挿入は困難であった。